東京近郊で、木組みと土壁の家づくりを実践しています。

2010年11月30日

冬支度

 霜月も今日が晦日、明日からは師走。光陰矢のごとし。時の速さをあせってみても仕方が無いので、今日自分のすべき仕事をしていくだけ、と考えるようにしている。忙しくしていられるのは、社会に少しは必要とされている証、と思えば気も楽になるものだ。
 
 複式呼吸で、大きく腹に溜め込んだ息をできるだけゆっくり吐く。胸を張って大きく息を吐くだけだが、仕事に取り掛かる前に少しの間続けると、頭がすっきりとしてくる。自立神経のバランスを整える効果もあるらしく、座禅の効能にもつながるとテレビで紹介していた。気を落ち着けるにはいい方法の一つだと感じている。

 紅葉の便りが各地で聞かれる頃。日の光を透過して見上げるモミジの鮮やかさに、季節のはっきりした国で生活できる幸せを実感する。武蔵野の街路樹にはケヤキとイチョウが多いが、天気のいい日に紅葉した大木を下から眺めるのは気持ちがいい。今年は熱い夏の後に急に涼しくなったせいか、ドウダンツツジも真っ赤に色づいている。

 自宅の台所の北側は一部をガラス屋根としてあり、ザクロの大木の枝が覆いかぶさっている。4月の赤芽、5月の新緑、6月の紅花、夏の緑陰、11月の紅葉と、一年を通じてザクロを見上げて四季を楽しむことができる。

自宅トップライト.jpg

 紅葉を楽しんだ後、我が家の冬支度が始まる。師走を迎えるこの時期、ガラス屋根の上に落ちた葉っぱで空が見えなくなる。当然室内も暗くなる。雨樋も落ち葉でいっぱいとなり、一年間の土がたまって詰っている。雨樋の掃除も兼ねて、屋根に上って洗剤をつけてガラスを水で洗っていく。剪定ばさみで増えすぎた枝を切り、ザクロ酒用に使う赤く熟れた実を収穫する。甘ずっぱい実を口に入れると、子供の頃の記憶がよみがえる。

 青空を見上げられる状態になったガラス屋根を上で、黄色く染まったザクロの葉が風に踊っていた。気持ちのいい秋の日の午後、ゆっくりと時間が流れていくのを感じた。

 2010年11月30日 高橋昌巳

 
 
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2010年11月22日

鎌倉探索

 11月20日、紅葉が始まった秋晴れの鎌倉市街を探索した。これまでに市内で5件の家づくりに携わってきたので、おおよその地図は頭に入っている。露地や山道が多いこの町は、時間のゆとりのあるとき、行き場所を特定しないで歩いのがいい。ところどころに残る石積みの擁壁、竹垣、庭などと釣合の取れたいい家を、じっくり眺めながら歩くひと時は時間の経つのを忘れる。

 この日は、鎌倉市駅から、笹目と由比ガ浜で建てた家を眺め、和田塚駅から江ノ電に乗り、腰越で設計事務所を始めている和温スタジオの高橋理恵氏を訪ねるコースで歩いた。大船駅までもどって金沢八景行きのバスに乗り、横浜市山の家で開催された木の家ネットの総会に夕方から参加した。

鎌倉・石川邸.jpg


 最初に尋ねた笹目の家は2007年に竣工したもので、庭師による植栽が建物とバランス良く整備されている。山を背景にして、静かなたたずまいの家が多いこの界隈に、少しずつ馴染んできている様子が見て取れて嬉しかった。土佐漆喰塗り曲面鎧仕上げの妻壁、大谷石積みの塀、苔と植栽が、時間の経過とともに、きっとさらに味わい深いものになると想像し、何度も振り向きなから後にした。


鎌倉・岡部邸.jpg


 江ノ電の線路を渡ると、ほどなく2001年に竣工した由比ガ浜の家に着く。10年間という時間の経過がしっかりと現れていて、どっしりとした姿である。竹小舞土壁塗りに色土を塗って仕上げた外壁は、自然の洗い出し仕上げ風となり、黒くなった杉材の架構に似合っている。まとまった敷地が細かく開発されて無国籍風の建物も珍しくない鎌倉にあって、ここではほっとする空気を感じられた。

 腰越で小さなカフェを開いている高橋理恵氏は、5年前に当事務所から独立して鎌倉で仕事を続けている。江ノ電が道路を走る様子を眺められる店は、こじんまりとしているが、板や漆喰塗りで仕上げられた居心地の良い空間である。コーヒーと自家製カレーも、セットで1000円という金額からすれば納得できる品質だと思った。鎌倉・カフェ・設計士とライフスタイルとして、自分らしい生き方を続けている様子で今後が楽しみである。

 夕方から21日に掛けて参加した木の家ネットの総会は、とにかく熱い思いの人が集まる場で、元気をもらった。密度の高い会合を開くまで走り続けてくれた関係者の方々の御努力には、頭の下がる。日を改め、頭を冷やしてから会に参加した経験をまとめたい。

 2011年11月22日 高橋昌巳


 

 
 
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2010年11月15日

恵比寿大黒と珪藻土

 茶の花、山茶花、柊の花など11月に咲く花は、奥ゆかしいものが多い。常緑の葉に隠れがちな花弁を付けた小枝を、備前焼きの徳利や越前焼きのお歯黒壷など、小ぶりの花活けに挿す。控えめな花が、あたりの空気に落ち着いた華やかさを添えていく。

 下駄箱の上でも、トイレの棚でも、そこに花があるだけで、ガサガサしがちな気持ちに、わずかでもゆとりが生まれてくるのを感じる。野に生えても、木の枝に付いていても、花は花なのだが、切って器に挿すという行為が、花を見て感じる花に変えるようだ。

 昨日11月14日に、柏市のO邸で開いた見学会では、数家族の方に家の内外を見てもらうことができた。快く応じてくれた建て主家族は、ご夫婦で細かく説明をしてくれ、座卓を囲んで始めてお会いする方々に自分達の経験談を語ってくれた。おばあさんと二人の息子さんとお嬢さんも、お客に出迎えの挨拶をしてくれたのが嬉しかった。

 新居に移り住んで1年近くになるが、こざっぱりとした生活を続けている。人が来れば大抵は片付けをするものであるが、この家ではご主人自ら掃除をするようになったと話していた。柱・建具・壁などを見ているだけで、飽きないという。綾織の畳表の表情や襖の市松模様張りなど、職人の手間がどれだけ掛かっているのかを見て知っているから、人には細かく説明したくなるらしい。

岡田邸台所壁.jpg

 この家の壁は、1階の半分が中塗り土、台所が珪藻土入り漆喰、階段と2階が黄土ハンダで仕上げてある。台所には杉の厚板で製作した大テーブルが置かれ、この家族が集まる場所となり、書類を広げての事務的な作業も行われるらしい。家族にタバコを吸う人はいないが、他人が半日この部屋でタバコを吸っていても、夕方には臭いは消えているという。どうやら、漆喰に混ぜた珪藻土が効いているようだ。

 20年近く前、ある家の台所の壁に珪藻土を混ぜた中塗り土を塗ったことがある。「カレーを作った日に、以前の家では玄関までカレーの臭いが漂ってきていたが、新居ではまったく他の部屋には臭いが移らなくなった」、といって驚いていたのを覚えている。多孔質の珪藻土の吸臭作用はよく知られている。座敷の壁に塗れば、畳の香りを吸収してしまうほどの効能がある。

 市販の珪藻土仕上げ材には興味は湧かないが、珪藻土の効能は使い方次第で喜ばれることが多い。既調合袋ものの漆喰材料に、15%程度の珪藻土、パーライト、藁スサを加えて練り、コテで撫でて仕上げると温かみのある壁が生まれる。

 台所の棚上に置かれた恵比寿様と大黒様も、澄んだ空気の部屋に置かれて、きっと居心地がいいに違いない。

 2010年11月15日 高橋昌巳

 
posted by 高橋昌巳 at 21:02| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
 
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