東京近郊で、木組みと土壁の家づくりを実践しています。

2010年08月28日

荒壁の色

 横浜の現場での打ち合わせがあり、荒壁塗り後の壁の状態を確認した。荒壁表塗り・裏返し塗り共に完了して数日たち、水気を含んだ粘土が次第に乾いて土本来の色を見せ初めている。吉田左官の手配により、静岡県三ケ日から取り寄せ、現場で数ケ月寝かせた土は薄い茶色で、愛知県豊田市や兵庫県淡路島の中塗り土の色に近いと感じた。関東の荒木田土の灰褐色とはだいぶ違い、このままでも十分仕上げとして通じる落ち着いた色合いをしていると思った。また、大きなひび割れが見られないのも好感できた。

大関邸荒壁.jpg

 荒壁用に使う粘土は粘性が強いものを選んで使うため、藁スサの量が少ないと乾燥収縮して荒壁の表面は大きくヒビ割れる。100ℓの粘土に対して入れる藁スサの量を0.6s程度としているが、家一軒で仮に3㎥の粘土を使うとすれば、一袋40s入りの藁スサを30袋程度混ぜることになる。実際水合わせの現場を見ていると、粘土のかさより多い程の藁スサを加えて水で練り合わせている。寝かせた粘土を実際に塗る段階で、再度藁スサを加える。

 粘土と藁スサの金額を比べると藁スサの方が高いと聞くことが多い。刈り入れ脱穀して残った藁など、どこの田圃にもありそうなものだが、人手を減らすために鎌ではなくてコンバインで稲刈りを行う現代、藁は刈ったそばからバラパラと田圃にまかれてしまう。結局、荒壁の粘土に混ぜる藁を確保するには、稲作農家に頼んでコンバインではなくて鎌で刈る藁を残しておいてもらう様に、契約しているという。

 小舞掻きに使う縄が藁縄から工場生産の麻縄に移っていったのも、今は手で稲藁をきつく撚ってなうことをしなくなったからだと聞く。、コンバインによる稲刈り同様で、自然の素材に手を加えてから使用するという、基本的なところで社会の仕組みが変わってしまっている。厄介な時代になったものである。


 もともと土壁の家は、竹や葦を藁をなって作った縄で掻いた小舞下地に、近くの田圃の底土の粘土に稲藁を切って混ぜ合わせた粘土を、人の手で付けて壁を作るものであった。竹も葦も藁も再生産する材料なので、循環型の家づくりそのものを長い間続けてきたといえる。

 荒壁を見ていると、家の囲いとしての原型を見るようで、緊張した体のこりが少しずつほぐれていく感じがする。一枚一枚の壁が均一性と間反対の表情でしていて見ていて飽きない。現場ごとにこんな瞬間を体験できるのだから、土壁の家づくりは急いではいけない。やがて見えなくなる工程なのだからしっかりと目に焼き付けておこうに思う。

 あまり難しく考えてもしかたない。仲間とできることを続けていこう。

  2010年8月28日 高橋昌巳

 
posted by 高橋昌巳 at 19:43| Comment(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月21日

現場見学会

 横浜市内で進めている新築住宅の現場見学会を本日開き、家づくりを考えてい家族や大工さんなどに、架構と竹小舞の状態を見ていただいた。使用部材の太さ、加工の丁寧さ、竹小舞の気持ちよさなど、驚きと安心と満足をもって、時間を共有できた。当事務所にとっては初めての試みであったが、伝統的な木組や竹小舞土壁の家が一つでも増えていけばいいので、開いてよかったと感じている。

大関邸竹小舞0821.jpg


50代の男性の言葉。
「徳島の山奥で育ったが、自分達の家の壁は両親が小舞を掻き土を付けて作ったと聞いている。壁つくりで困ったら、いつでも呼んでくれ。そのへんの左官屋さんより働くから、と今でも母親が言っている。」
こうゆう元気なお年寄り、結構多いのかもしれない。始まったら是非とも現場によってほしい。

40代の男性の質問。
「壁の外側に梁が出ていたり、軒天に板が張られていますが、法的に大丈夫なのでしょうか。」
準防火地域内でも、真壁や化粧軒裏の家づくりができることを丁寧に説明したが、土壁や厚板の防火性能について、一般にはまだまだ認知されていないようだ。広報活動も大事な仕事だ。

新潟から新幹線できた大工さん。
「うちの方は竹がないので、葦で小舞を掻いて土を付けている。丁寧な仕事で見ていて気持ちがいい。」
土壁は現在でも地方色が残っているし、今後も地域にあったやり方を続けられるようにすることが必要だ。法律で仕様を決める際には、ぜひとも巾を持たせた議論を行ってほしい。

 今回の現場公開を許可してくれた建て主、遠い所から見に来てくれた方々、小舞掻きを続けながら応対してくれた左官の吉田さん、ありがとうございました。
posted by 高橋昌巳 at 20:27| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月12日

竹小舞

 横浜市の新築現場では、今週から竹小舞掻きが始まっている。この現場の担当は、鎌倉市在住の吉田左官・吉田一正氏である。漆喰・土物・大津と何でもこなし、仕事は速く出来もいい。これまで鎌倉や横須賀の現場では、土佐漆喰湾曲鎧仕上げや、三ケ日の赤土を使った荒壁仕上げをものにしてくれた頼りになる左官職だ。他に4〜5名の応援が加わり、手馴れた様子でみるみる竹小舞下地が出来上がっていく。既に1階はほとんど完了し、お盆休み明けには残りの2階部分もほどなく終わるという。

大関邸竹小舞.jpg

 真竹を割った割竹と、間渡しに使う女竹は静岡県内の小舞竹専門店から取り、縄は麻縄を使用している。割竹の巾は7分(21mm)で使いやすい巾だという。竹と竹との隙間を1寸(30mm)から1寸2分36mm)程度開けて仕事をしているので、小舞竹を掻いていく間隔は1寸7分(51mm)〜1寸9分(57mm)となっているところが多い。割竹の巾に多少の違いがあるし、間渡し竹の間に配る本数次第で間隔も違ってくるが、建設省告示第1100号で定める「巾2p以上の割竹を4.5p以下の間隔とした小舞竹」という仕様規定には概ね沿っていない。

 割竹と割竹の間の隙間は、縄を通すために指が入る1寸から1寸2分程度の隙間を設けて決められることが多く、竹の巾を2p以上とすれば50mm〜60mmとなるのが普通であろう。壁の薄い茶室の土壁のような場合は、竹の巾も狭く、一枚の壁の両側から二人掛かりで掻いていくので割竹間隔45mm以下ということもあろう。反対に、納屋や倉庫のような場合は材料削減を考えて割り竹の間隔は65mm以上が普通という。

 告示で定めた割竹間隔は、使用する竹の巾のことも指が通る隙間のことも考えてはいないようだ。割竹の芯芯間隔で定めた仕様を、割竹と割竹の隙間で考えるほうが、現場では使いやすい仕様となることははっきりしている。

 土壁の諸性能の検証は始まったばかりであるが、民間伝承技術を国が仕様として規定するなら、現場に即した巾を持たせた規定とする必要がある。そうでなければ、仕様規定をきっぱりと削除したほうが土壁を続けていこうとする関係者の為になるはずである。

 庭の朝顔が、竹小舞に蔓を伸ばしそうな勢いで伸びている。荒壁を付けるのは23日からの予定であるが、それまでの間、竹小舞に朝顔が紫色の飾りを毎日付けてくれそうである。

2010年8月12日 高橋昌巳
 

 
posted by 高橋昌巳 at 18:49| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
 
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