東京近郊で、木組みと土壁の家づくりを実践しています。

2010年07月29日

赤い土

 数年前、神奈川県横須賀市内の現場で、静岡県三ケ日の赤土を取り寄せて荒壁に塗った経験がある。藁スサを混ぜて水合せした状態は関東の荒木田土と同じ青灰色だが、クワを入れたとたんに土の色がみるみる赤く変色していくのには驚いた。おそらく粘土に含まれる鉄分が多く、空気に触れて酸化した色なのだろう。荒木田土とは別物の魅力を感じたのを覚えている。

 赤い土.jpg 

 竹小舞を掻き終えて、現場で寝かせた粘土を塗ってみた。乾いてくると、落ち着いた鈍い朱色の荒壁が生まれた。このままでも十分美しいと感じたので、2階室内側を赤い荒壁仕上げとして残すことを考えた。建て主に相談したところ、「手間を掛けた仕上げよりも、材料の魅力を味わいながら当面生活してみたい。」との回答が得られ、本当の荒壁仕上げが生まれた。

 粘土の同等以上のかさの藁スサを入れて数ケ月寝かせたので、塗った荒壁に大きなヒビ割れは発生していなかった。ただ、収縮して固まる粘土は、柱や貫際で隙間が出てしまう。吉田左官にお願いして、まず貫伏せを化粧として仕上げもらった。赤い壁に2本の横帯が入り、面白い壁が生まれた。柱際については、建て主と私とで丁寧に荒壁と同じ土を詰め込んで隙間を埋めた。細かい篩で粒子を整えた色土上塗り仕上げを見慣れた目には、赤い荒壁がとても新鮮に感じられた。

 8月1日に上棟式を迎える横浜の現場では、吉田左官の計らいで、同じ三ケ日の赤土が用意され、現場で塗られるのを待っている。骨太の力強い架構と十分釣合う壁がまた生まれそうである。建て主の好意により、竹小舞掻き段階で、現場を公開できることになった。一報いただければ、小舞や荒壁土の説明をできるように、職方と準備している最中である。

 2010年7月29日 高橋昌巳
 
 <お知らせ>
この度“見学会”を開催することとなりました。
見学会では“木組み”と左官・荒壁下地の“竹小舞”の見られる
タイミングでの開催を予定しています。

●日時:8/21(土) 9:00〜12:00
●場所:横浜市港北区

ご希望の方は下記のアドレスまでご連絡ください。
city2@minos.ocn.ne.jp

posted by 高橋昌巳 at 13:38| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月22日

三和土土間

 昨年の秋に改修を終えた都内の家に撮影と取材で訪れた。
築27年の家付き土地を買つた若い夫婦は、1階と階段部分を
思い通リにリフォームして住んでいる。竹小舞土壁漆喰塗り、
三和土(たたき)土間、現場製作キッチン、モザイクタイル張り
の扇型風呂、焼き杉板張りの外壁と、工事を通じて建て主には
いろいろと参加してもらい楽しんでいただいた。

 8帖の和室南側には、ゴーヤを植えて緑のカーテンを作っていて
涼しげである。編集者・写真家・ライターと私に加えて建て主夫婦、
合計6人が扇風機のみで生活している家の中で、午前中暑さを
苦しむことなく仕事を終えることができた。

 撮影と取材を終え、みんなで近くの魚屋でイワシ焼き魚定食を
食べてから外に出ると何しろ熱い。35〜36度はありそうな猛暑である。
たまらず、また若夫婦の家に飛び込んだが、三和土の玄関土間が
ひんやりしていてなんとも心地よかった。

三和土土間.jpg

 乾燥したエアコンの涼しさとは違う湿度のある涼しさである。
一週間前に梅雨が明けたばかりで、土間の土はまだ水分を含んでいる。
素手で触ってみると、ひんやりと冷たい感触が手の平から伝わってきた。
玄関土間まわりの室温を下げているのは、
確かに湿気を帯びた三和土だと解る。

 間口2間奥行き1間の土間は、左官の親方に
粘土と消石灰と塩カルを混ぜて作ってもらった材料を、
建て主自らが叩き締めて平らにしたものだ。
土間の厚みは砂利下地に12p程度のものである。
年間通じて大地と繋がっているので、湿度管理がされた玄関土間は
乾燥しすぎることがない。
梅雨の水分を吐き出していく今頃は、
気化熱を奪っていくので特に涼しく感じる効能がある。

 三和土(たたき)土間のある家を羨ましく感じながら
若夫婦に別れを告げた。

  7月22日 高橋昌巳


 <お知らせ>
この度“見学会”を開催することとなりました。
見学会では“木組み”と左官・荒壁下地の“竹小舞”の見られる
タイミングでの開催を予定しています。

●日時:8/21(土) 9:00〜12:00
●場所:横浜市港北区

ご希望の方は下記のアドレスまでご連絡ください。
city2@minos.ocn.ne.jp

 
posted by 高橋昌巳 at 16:42| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月13日

アースカラー

 荒壁塗り後の仕上げ工程は貫伏せ・斑直し・中塗り・仕上げ塗りと進むのが一般的で、丁寧な仕上げの場合は貫伏せ・チリ廻り塗り・底埋め斑直し・中塗り・仕上げ塗りなどより手間を掛ける。建築本体の完成度や求められる壁の質感、全体工事費や左官の手間賃によって、いかようにも対応できるというのが左官の特徴といってもよいかもしれない。もっとも手間の掛け方の違いはあるのは左官の世界に限らないことで、襖にしても、シナ合板に直張りか、組子に袋張りをしてから張るのか、7枚張り8枚張りと紙のふっくら感を求めて張り重ねるのかと、経師の世界特有の奥深さがあり興味は尽きない。手間を掛けただけ、素材本来の良さ・味わいを活かせることは、職人なら誰もが知っていることだろう。

 さて、左官工事の仕上げ塗りの段階になると、現場の左官職に塗り見本の製作を依頼して最終仕上げの確認を行う。砂や藁スサの調合を決め、数種類の土をブレンドして板の上に塗り、乾いた状態で確認するのである。現在、都内で進んでいる家の座敷は、愛知県内採取された中塗り土と関東の荒木田土を混ぜた渋い色合いで塗ることになった。土の色そのものは地味であるが、壁の色が勝ちすぎていない部屋の方が、花や軸との相性が良く、花の美しさや書画の味わいを引き立たせてくれると感じている。しかし、よく考えれば大地から掘り起こし粘土魁を潰して粉にした塗った壁である。大地の色・アースカラーと自然の花や紙との相性がいいのは当然で、再発見と言ったほうが適当かもしれない。


塗り見本_edited-1.jpg

 自然の土の色なので同じものは一つとしてないが、茶色系・黄色系・赤色系・白色系・灰色系・水色系などに分類できる。京都の桂離宮・松琴邸西側の壁などはかなり赤みの強く、伏見稲荷大社土塀は山吹色が印象深い。もともとは粘土に含まれている金属の種類やその割合で土の色が決まってくるもので、酸化鉄の赤みの割合が多ければ赤みの強い壁になり、比率によっては黄色になる。ただ、混じりけのない工業製品の塗装材料とは違い、たとえば黄色の土の中には白・黒・茶・赤・青などの色も微妙に含まれている。この色合い的な深みが、土そのものを仕上げに塗った部屋に落ち着きを与え、長居しても疲れない空間を生む。

 土の繊細な表情に特別な感情を抱き、仕上げられた空間に安らぎを求めるのは日本だけなのかも知れないが、いいものはこの後も残っていくはずだと願いたい。そして、粉土や塗り見本に触れることがあったなら、色土の採取と製粉を続けてくれている各地の素材業者のことも時々は思い出して応援して欲しい。土壁文化を支えてきたくれた彼らの仕事がなくなる時は、土壁の表情を愛でることもできなくなるのだから。

 2010年7月13日 高橋昌巳
posted by 高橋昌巳 at 11:37| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
 
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